女性や若手の国会議員が増えることで、SDGsの達成度が高まる可能性があることが明らかに
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、本学のSDGsプロジェクトの一環として公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)と協力し、100カ国以上の国会議員の構成を調査しました。この研究は、海洋生態学、環境政策、政治学の研究者が行った学際的な共同研究です。研究の結果、女性や若手議員が多い国ほど、SDGsの17の目標と169のターゲットの達成度が高いことが明らかになりました。また、政策決定プロセスにおいて社会経済分野のSDGs目標と環境分野のSDGs目標への取り組みが両立できていないという傾向を確認しました。
「The relationship between female and younger legislative representation and performance on the Sustainable Development Goals (SDGs)(仮訳:女性・若手議員と持続可能な開発目標(SDGs)に関するパフォーマンスの関係性)」というタイトルで学術誌Environmental Research Lettersに掲載された本論文は、OIST進化・細胞・共生の生物学ユニットの研究者デヴィ・ラングレ博士とIGESサステイナビリティ統合センター副ディレクターの天沼伸恵氏、そして同リサーチリーダーのエリック・ザスマン博士が共同で発表したものです。
女性の議員の数が極めて少なく、閣僚の平均年齢が高い日本を含め、多くの国ではまだ女性や若手の議員の割合が少ないのが現状です。研究グループは、今回の結果をきっかけに、各国の議会で多様性が高まり、SDGs達成の後押しになることを期待しています。
研究では、各国の分野別のSDGs達成度に関する調査も行いました。ラングレ博士は、「興味深いことに、SDGs目標を環境分野と社会経済分野に分けてみると、分野によって女性や若手議員が目標達成に及ぼす影響の度合いが異なることが分かりました。例えば、女性議員の比率が多い国では社会経済分野の目標の達成度は高くなっていますが、環境分野ではそうした影響はみられません」と説明しています。
この説明に対し、天沼氏は「今回の調査で、社会経済分野と環境分野が両立できない関係にあることも確認できました。この傾向は特に、社会経済分野の目標の達成度は非常に高い一方で、環境分野の目標の達成度がそれほど高くない先進国において顕著にみられます。この現状は世界的に重要な課題であり、両分野のトレードオフの関係をシナジー(相乗効果)に変える必要があります」とつけ加えます。
研究グループは、トレードオフの課題が適切に解決されない限り、女性や若手の国会議員数が増加したとしても、SDGs達成につながらない可能性があると指摘します。さらに、SDGsの達成期限である2030年にむけて、より両分野のバランスの取れたアプローチをとる、もしくはすでに社会経済分野の目標が達成に近づいている国では、気候変動、生物多様性、持続可能な消費と生産などの環境分野のSDGsを優先させて取り組んでいくことが急務となると説明します。天沼氏は、「今回の研究結果が示しているのは、各国が気に入ったSDGs目標だけを選んで取り組んでいる現在のアプローチには限界がある」と警鐘を鳴らします。
今後さらに研究を進めることで、女性や若手国会議員の割合が高い国が、SDGsの達成により近づいている理由や、地方自治体における女性や若手議員の増加が、持続可能な開発にどのような影響を与えるかが明らかになるかもしれません。世界の異なる地域において同様の傾向が認められれば、社会経済分野と環境分野の目標のつながりを強化できる可能性もあります。
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