科学技術立国・日本をリブートせよ — OIST FORUM 2021
科学技術立国を掲げ、伝統的に科学研究や技術開発に力を入れてきた日本は、かつて基礎研究でもハイテク技術でも世界トップと伍してきました。しかし、世界各地で勃興した破壊的イノベーションによる産業構造や、パンデミックや気候変動など世界規模の課題解決に向けたソリューション提示の競争において、各国に後塵を拝してきた現実があります。
日本が再びかつてのように科学技術で世界をリードするためには、そして、科学技術の力をもって豊かな国であり続けられるには何が必要なのでしょうか。OISTフォーラムは、各界のキーパーソンとともに改めて日本の課題を提起して視聴者の皆さんと共有し、解決策を共に模索したいという思いで開催しました。
今年のフォーラムは、2021年3月2日から4日までの3日間にわたり、オンライン開催とすることで、より多くのスピーカーとパネリスト、そして視聴者に参加していただくことができ、合計2,000人を超える視聴者の方にご参加いただきました。
オンライン専門の経済メディアとして日本でユニークな位置を確立し、ビジネス界のリーダー、アントレプレナーや学生など、知的好奇心の強い読者とのインタラクティブ性の高いメディアとしても人気のあるNewsPicksと共催で行われたOISTフォーラム2021では、3つのテーマを設定し、毎日1つのテーマを掘り下げて議論を進めました。
1日目:Science x World 世界が日本を求める時代、再び。「シン・科学技術立国」
河野太郎内閣府特命担当大臣(沖縄および北方対策、規制改革)の力強いビデオメッセージおよび、ピーター・グルースOIST学長によるご挨拶に引き続き、キーノートスピーカーとして登壇した慶應義塾大学環境情報学部教授でYahoo!株式会社チーフストラテジーオフィサーの安宅和人氏は、著書『シン・ニホン』で示したいくつかのデータにより、世界において日本の科学技術力が低下している現状を紹介した上で、理系の学生数や人材育成、人材の多様性、適切な予算配分や投資といった日本の伸びしろを紹介しました。
パネルディスカッションは、NewsPicks 副編集長で科学ジャーナリストの須田桃子氏によるモデレーションにより、京都大学理事兼大学院総合生存学館特任教授でOISTの評議員も務める久能祐子氏、東京大学宇宙線研究所長で2015年ノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章氏、そしてキーノートスピーカーの安宅和人氏の3名が日本の科学研究の現場で起きている現状や、日米の科学技術に対する認識の違い、日本の未来を見据えた国家予算の配分などについて話し合いました。
2日目:Science x Business 科学技術立国のカギになる「ビジネス」の創り方
OIST統合オープンシステムユニット教授の北野宏明氏は、キーノートスピーチで、AIや長寿に関する研究など、自身が取り組んでいる様々な革新的科学プロジェクトを通じて、より良い未来の社会構築を加速させる「Moonshot Ecosystem」構想を紹介しました。
続いて行われたパネルディスカッションでは、大阪大学大学院生命機能研究科/医学系研究科教授で、AutoPhagyGOの創設者である吉森保氏、リアルテックファンド代表で、株式会社ユーグレナ取締役副社長COOである永田暁彦氏、そして、パナソニック株式会社環境エネルギー事業担当参与の馬場渉氏が、ビジネスと研究の理想的な関係について話し合いました。
3日目:Science x Sustainable Future SDGsをアップデートせよ「ディープイシュー」は科学技術が解決する
キーノートスピーカーに迎えたスリーエムジャパン代表取締役社長の昆政彦氏は、グローバルな社会課題を解決するために必須となる「イノベーション」について、まずイノベーションとイマジネーションを区別する定義をし、顧客とのオープンイノベーションや、技術者を活かす社内文化など「科学が世界を変える」とする同社の様々な先進的な取り組みを紹介しました。
パネルディスカッションは、OECD東京センター所長の村上由美子氏、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長の渋澤健氏、株式会社アバターインCEOの深堀昴氏、そしてキーノートスピーカーの昆政彦氏も加わって行われました。社会全体が、科学に投資してリターンを生み、多様で異質な人々が関わってイノベーションを生む架け橋が必要であるとの認識で一致しました。
3日間を通じて視聴したという視聴者から、「あとあとまで印象に残るすばらしいイベントでした!ここ数年の中で、もっとも刺激的なディスカッションを見せていただいた気がします。」といった声や、OISTに対して、「日本の進むべき新しい一つの道を示していると思います。日本初世界へ、価値と未来を作り、発信していってください。」といった声が寄せられました。