新たなエネルギーシステムが持続可能な未来を拓く
OISTの教員宿舎の家庭用電力を太陽光発電など自然エネルギーでまかなうようにする画期的なプロジェクトがはじまり、今後数ヶ月間に渡って、従来型に比べて飛躍的に持続可能で効率的なエネルギーシステムがOISTに導入されます。これはOISTオープンバイオロジーユニットの北野宏明教授およびソニーコンピュータサイエンス研究所のチームが考案したオープンエネルギーシステム(OES)の実証研究であり、沖縄県の補助事業の採択を得てOIST、県内事業者の沖創工とソニーグループで研究コンソーシアムを構成して研究を進めています。ソーラーパネルを各家庭の屋根に取り付け、さらにパネルをエネルギーサーバーと呼ばれる、電力管理装置と新規開発された蓄電池を内蔵する設備に接続し、各戸の物置部屋に設置します。最終的には全ての家のエネルギーサーバーを直流電流 (DC)でつなげ教員宿舎全体でエネルギーを融通するネットワークが作られます。
太陽エネルギーから発電すること自体は今に始まったことではありません。しかし、ソニーOESプロジェクトの驚くべきところは、既存の太陽光発電システムよりもはるかにエネルギー供給が安定していることです。太陽はこちらが望む場所や時間に照らないので、不安定なエネルギー源です。対して北野教授が考案したシステムでは、まず家庭のエネルギーサーバーをDCマイクログリッド状に繋げることによって、各家庭に日照量のムラがあっても全体に均等にエネルギーを供給することが可能になります。例えば、人が不在がちな家で発電された電力を常に人が家にいる家庭に回すなど、様々な生活パターンの人たちが電力を融通し合い効率的にエネルギーが分配されます。また、発電されたエネルギーがソニーの提供する特別な蓄電池に蓄えられるので、晴天時に蓄えたエネルギーを曇天時使うなど、天候に左右されることなく安定してエネルギーを供給できます。
9月に入り、ソーラーパネルが数戸の屋根に設置され、試験運転が始まりました。この間、ソーラーパネルとエネルギーサーバーが各家庭のエアコンに電力を供給します。試験運転でこのシステムの利便性が確認された後、残りの家庭にもソーラーパネルが設置され、各家庭のエネルギーサーバーを地下に張り巡らされたマイクログリッド構造で繋げます。研究コンソーシアムは、OESの研究を進めるためにOISTキャンパスに OESリサーチセンターを設置しました。ここでは実験の運営、データの収集・解析などを行っていきます。
北野教授のチームはいずれこの技術を電気の通っていない離島や発展途上地域のインフラ基盤を整備するために応用しようと考えています。「今のように石油や石炭を燃やし続けては、気候変動によって私たちは窮地に追いやられるだろう。」と、北野教授は述べます。「これから発展する地域は、先進国のように化石燃料を大量諸費し後から悔やむよりも初めから持続可能エネルギーのインフラを導入した方が、地球環境にも生活への影響も良好だろう。数時間電気を使える時間が増えるだけで、仕事や勉強ができる時間が延びて経済的自立に繋がるだろう。」と、北野教授は将来への展望を語りました。