第11管区海上保安本部と業務協力協定を締結
OISTの研究活動の一つに、沖縄周辺海域における黒潮、暖水塊や冷水塊に伴う渦の様を呈する流れなどを示す海流と、潮の干満に伴って発生する海水の流れなど、潮流のモデルやシミュレーションがあります。これらを高度化するためには、実測した詳細な海の深さのデータ、海流や潮流のデータ等が不可欠です。
一方、第十一管区海上保安本部(十一管本部)では、海上保安業務の一つとして、船舶、衛星等で観測されたデータをもとに、海難発生時の捜索区域を決定するために漂流予測業務を行っています。広大な海で精度の高い漂流予測を行うには、船舶、衛星等のデータだけでなく、シミュレーションで計算された海流や潮流の情報を必要とします。
そこで、相互協力を図り、沖縄周辺の複雑な海流や潮流予測の高度化を実現することで、沖縄の海における安全・安心な活動、社会経済活動の発展等に繋げるため、去る3月27日にOISTのジョナサン・ドーファン学長と11管本部の眞嶋洋本部長が、同本部で開催された調印式で業務協力に関する協定書に署名、同協定を締結しました。業務協力は、主に御手洗哲司准教授が率いるOIST海洋生態物理学ユニットと、十一管本部の海洋情報調査課が中心となり、同本部関係課と連携し、以下の分野で実施していきます。
- 潮汐モデル及び海流シミュレーションの高度化
- 海底地形データ及び海流データの取得
- 漂流予測の精度向上
- 業務成果の検証・解析・評価
ドーファン学長は、「お互いに連携することで知識と革新的技術を共有し、新たな発見につながることが期待されます。OISTが必要とする海洋データを第十一管区海上保安本部が提供し、第十一管区海上保安本部が必要とするシミュレーションで得られる情報をOISTが提供できるのです。」と、本協定の重要性を強調しました。
眞嶋本部長は、「沖縄周辺の複雑な海流や潮流予測の高度化が実現すれば、沖縄における安全・安心な海洋レジャー、環境保全、海上輸送、水産業など、様々な分野への貢献も期待されます。」と、述べられました。
OIST海洋生態物理学ユニットと十一管本部は、県内の複数の機関とともに沖縄海洋調査・研究連絡会を昨年立ち上げ、去る1月31日にOISTで第2回目の会合を行いました。本協定締結で両機関の連携がさらに深まり、同会合の目的にも資することが期待されます。
(名取 薫)