OISTのスバンテ・ペーボ教授がノーベル賞を受賞
ノーベル賞選考委員会は、マックス・プランク進化人類学研究所所長で、OISTの教授(アジャンクト)も務めるスバンテ・ペーボ教授が、「絶滅したヒト科のゲノムと人類の進化に関する発見」により大きな貢献をしたとして、2022年のノーベル生理学・医学賞を授与することを発表しました。
この栄誉ある賞は、カロリンスカ研究所で日本時間10月3日に発表されました。
ペーボ教授は人類の進化とゲノムに関するいくつかの画期的な研究において高い成果を上げ、古遺伝学という新しい学問分野の確立に貢献しました。
ペーボ教授は、人類の祖先であるホモ・サピエンスと共存していた絶滅種ネアンデルタール人のDNA配列の解読に初めて成功し、後に全ゲノムの解読に成功しました。 また、2008年にシベリアの洞窟で発見された古代人の指の骨のDNAから、これまで知られていなかった絶滅したヒト科の一種「デニソワ人」を特定し、人類の歴史に大きな影響を与えました。
さらに近年では、7万年前に絶滅したネアンデルタール人とデニソワ人の祖先が交配し、現在の人類集団の一部にネアンデルタール人とデニソワ人の遺伝子が見いだされるという画期的な発見をしました。このような現生人類への遺伝的な影響は、例えば新型コロナウイルスのような感染症の重症化リスクに影響を与えるなど、今日でも重要なものとなっています。
OISTにおいては、ペーボ教授はヒト進化ゲノミクスユニットを率い、ゲノムデータを用いて現代人と古代のネアンデルタール人やデニソワ人を比較することに研究の重点を置いています。現代人とネアンデルタール人やデニソワ人のゲノムデータを比較し、遺伝子の違いを明らかにするとともに、現生人類だけに存在する遺伝子の機能を探っています。最終的には、現生人類を現生人類たらしめているものは何かという、人類にとって最も根本的な疑問の一つに答えようとする研究です。
OIST学長兼理事長のピーター・グルースは、次のように述べています。「この度のスバンテ・ペーボ氏のノーベル生理学・医学賞受賞に際し、OIST教職員一同、心よりお祝い申し上げます。私自身も、マックス・プランク協会時代の同僚であるスバンテ氏をOISTの教員として迎え入れることに貢献できたことを大変誇りに思います。スバンテ氏は古遺伝学の創始者の一人で、ネアンデルタール人及びデニソワ人のゲノム解読に成功しました。ホモ・サピエンスのゲノムとの比較解析により、すでに重要な機能データが得られています。スバンテ氏は今後、ここOISTでネアンデルタール人とホモ・サピエンスのゲノムの比較解析に取り組むことを希望しており、本学としても大変喜ばしく思っています。この研究を通して、何が私たちを人間たらしめるのかという問いに重要な知見がもたらされることでしょう。」
スバンテ・ペーボ教授とその研究について過去の記事
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