天然類似現象(ナチュラルアナログ)から海洋酸性化の影響を調査
沖縄科学技術大学院大学(OIST)海洋気候変動ユニットの研究チームは、筑波大学、琉球大学、イタリアのパレルモ大学およびニューカレドニアのFrench Institute for Research and Development (IRD)と共に日本学術振興会(JSPS)の研究拠点形成事業資金を獲得し、International CO2 & Natural Analogues Network (ICONA、国際CO2・ナチュラルアナログネットワーク)を結成しました。
このネットワークは、天然類似現象(ナチュラルアナログ)を用いて海洋酸性化が海洋生態系にどのような影響を与えるかを理解するためのリソースを構築することを目標としています。助成期間は2021年から2026年です。
海洋気候変動ユニットの主宰者であるティモシー・ラバシ教授は、天然類似現象がどのように将来の環境を模倣しているかについて次のように説明します。「CO2シープでは火山、潮汐ラグーン、海底熱水噴出孔などにより、周辺海域に平均濃度以上のCO2が存在する環境ができています。このような環境を利用して、海洋酸性化の予測に基づく将来の海洋生態系がどのようになるかを調査することができます。」
海洋気候変動ユニットが注目するのは、パプアニューギニア、ニューカレドニア、イタリア、ニュージーランドのCO2シープです。
この国際共同研究の主な目標の一つは、研究手法の統一です。これには、天然類似現象を用いるすべての研究者が採用しなければならない最低限の要件を定める必要があります。これにより、酸性化の測定や周辺の生態系のモニタリングに一貫性が生まれ、世界中の研究を比較することができるようになります。
ラバシ教授は、このような標準化は珍しいものではないと強調します。「20年前にヒトゲノムプロジェクトが始まったとき、誰もがすぐに研究に取り掛かり、さまざまなツールやリソースが用いられていました。その結果、研究の比較が非常に困難となり、時間と資金が無駄になってしまったのです。その後、最低限の要件が定められました。このことから、研究を比較できるように、すぐに研究手法を統一した方が良いことがわかったのです。」
ラバシ教授は、研究手法の統一に加えて、研究資金を使って海外への現地調査や、国内外の他大学の研究者を対象としたワークショップを開催し、天然類似現象が地球的規模の変動に関する幅広い分野の科学研究でどのように利用できるかを紹介していきたいと考えています。
「この研究は日本の大学が主導し、日本政府が費用を負担しています。日本は、研究ツールとしての天然類似現象の価値を評価する最初の国です。海外の研究者にも、このような研究サイトの有用性を認識してもらうきっかけになればと思っています。」
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