イカと話す研究者
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テレサ・イグレシアス博士は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の実験動物セクションで頭足類サポートのチームリーダーとして働いています。タコ、コウイカ、ツツイカなどの頭足類は、その驚くべき変色能力といたずら好きな行動で知られています。
OISTポッドキャストの最新エピソードでは、サイエンスコミュニケーターのルシー・ディッキーがイグレシアス博士にインタビューをし、頭足類にみられる睡眠のような行動に関する研究や、キャリアの中で経験した、珍しい出来事などについてお話を伺いました。(ポッドキャストは英語のみです。)
イグレシアス博士は、野生の頭足類を初めて見たときのことを、次のように語っています。「今から何年も前のことですが、初めてツツイカの群れを見たんです。ツツイカは泳ぐときに隊列を組みますよね。その群れが私の方を向いていたのです。それまで一度も頭足類と接したことはありませんでした。ただ、ツツイカが腕で会話をすることを知っていたので、自分の指を少し動かして彼らを指差し、小指と人差し指を上げて彼らに向けると、全員が色を変え始めたのです。」
「今では、外側の二本の腕を上げる動作は、不快感や恐怖心、あるいはただ単に緊張状態にあることの指標になり得ることがわかりました。可能性としては、私がツツイカに『あなたたちに見られて私はイライラしている』と伝えたのか、ツツイカの群れが『それなら、こっちもイライラしてやるぞ』と思ったのかわかりませんが、あのジェスチャーが一種の恐怖反応を誘発して、それに対してツツイカが反応を示したのかもしれません。」
頭足類はいわゆる「睡眠」のような行動を取りますが、イグレシアス博士は、この興味深い行動を研究しています。頭足類は睡眠状態にあると思われるときにも、体色が著しく変化したり、質感が変化したり、眼球が動いたり、腕が痙攣したりなどする様子が見られます。イグレシアス博士は、これらの現象はすべて、人間や哺乳類の急速眼球運動(REM)睡眠(レム睡眠)を思わせるものであると説明しています。イグレシアス博士は、頭足類に関する研究の中で、この睡眠のような状態が哺乳類や鳥類、爬虫類の睡眠のようにレム睡眠とノンレム睡眠の2段階に分類される睡眠であるかどうかも調査しています。
頭足類は、このような問題を研究するのに便利なモデル動物です。なぜなら、皮膚が脳とつながっているので、体色の変化が実際に脳の活動を示しているからです。「レム睡眠についてわかっていることの1つは、脳の活動が、起きているときとほとんど同じように見えるということです。」
イグレシアス博士は、このような謎を解明することがどうして重要であるかという理由の一つとして、自然や身近な動物とのつながりをより強く感じるからであると述べています。「人間も動物の一種です。多少違いもありますが、全く無関係のものではありません。身近な動物を知ることで、人間中心の目線で人間自身のことを知ることができますが、同時に動物のことももっと知ることができます。身近な生物に対して、私たちは間違った思い込みを多く持っていると私は考えています。それらの思い込みを検証し、身近な生物がどのような行動をとっているのかということや、何を経験しているのかを発見することで、世界がもっと面白くなると思います」とイグレシアス博士は語っています。
「世界がはるかにもっと面白く見えてくると思います。」