皮膚に覆われた謎
私たちの祖先である最初の陸上動物は、海の中から陸上へと這い出て新しい環境下で生き延びるために、陸上生活への適応、すなわち体を乾燥から守る防水性の表皮を必要としました。この防水機能は大変重要で、厚さ10ミクロンの角質層という動物の表皮の部分は、陸上で生活する全ての動物に見られます。「ヒトも、ヘビも、ワニも、象もみんな同じです」と、構造細胞生物学ユニットを率いるウルフ・スコグランド教授は述べています。生命維持に欠かせないこの角質層の構造について、スコグランド教授と、スウェーデンのカロリンスカ研究所及び日本の資生堂リサーチ・センター所属の岩井一郎博士と同研究所及びカロリンスカ大学病院所属のラース・ノーレン(Lars Norlén)博士率いる研究チームは、Journal of Investigative Dermatologyに発表された論文の中で初めて明らかにしました。
「皮膚は私たちの体の中で最大の組織である一方、その機能についてはほとんど知られていません。」と、スコグランド教授は言います。同教授の長年の共同研究者であるノーレン博士は、今回ヒトの表皮から採取した薄片を瞬間凍結させ、電子顕微鏡を用いて、角質層構造の観察を行いました。スコグランド教授と、構造細胞生物学ユニットのラシュヨラン・オウバステッド研究員の役割は、観察で得られた画像の分析と、分析に必要な新しいソフトウェアの開発でした。その結果、研究チームは、脂肪分子がこれまでに見たことのない配列で角質層を形成していることを突き止めしました。
スコグランド教授は、「これは、一般的な皮膚構造の研究における最初の重要なステップです。」と述べ、今回の発見が、分子進化及び他の皮膚層に関する研究への扉を開いたことに加え、薬を体内の作用部分に運ぶために実用性が高いと説明しています。皮膚の層構造が明らかになることは、角質層へ薬物を運ぶ方法を研究者が発案する時に役立つことが期待され、その結果、表皮に直接貼付するパッチタイプの普及により、錠剤や注射薬から生じる副作用の減少に繋がることが期待されます。
本研究は、英国の科学系週刊誌 New Scientistにも取り上げられました。
“Strange fat explains skin’s waterproof properties”
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