OISTが恩納村と開発した新種の高機能米の名称を 「ちゅらおとめ」に決定

沖縄県恩納村産の新種米は、摂取後の血糖値を下げる効果があると評価されました

Harvesting OIST rice

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、2023年6月28日、恩納村と共同で研究開発をしてきた新種の高機能米の命名式を開催しました。

商標名「ちゅらおとめ」を考案した、県内在住の白尾綾子(しらお あやこ)さん、新里泰子(しんざと やすこ)さんには、OISTより感謝状が贈られ、記念品として恩納村で収穫されたちゅらおとめ1kgがそれぞれに贈呈されました。また、5年にわたるちゅらおとめの圃場実験において、農場の提供、稲の植え付けや管理、収穫まで、多大な貢献をいただいたとして、恩納村の長浜村長と、協力農家、荻堂盛保(おぎどう もりやす)さんにも、OISTから感謝状が贈られました。

Commemorative photo with participants
左から、グラノット・マイヤー上級副学長、お名前を提案した新里さんと白尾さん、協力農家の荻堂さん、恩納村の長浜村長、OISTのマルキデス学長、植物エピジェネティクスユニットの佐瀬教授
左から、グラノット・マイヤー上級副学長、お名前を提案した新里さんと白尾さん、協力農家の荻堂さん、恩納村の長浜村長、OISTのマルキデス学長、植物エピジェネティクスユニットの佐瀬教授

これまでの経緯

ちゅらおとめの研究開発プロジェクトは、OIST植物エピジェネティクスユニット代表の佐瀬英俊教授が2012年に開始。沖縄の亜熱帯気候でも高い収穫量が得られる難消化性の新種米の開発を目指し、研究に取り組んできました。

佐瀬教授率いる研究チームは、恩納村の協力の下、5年にわたる難消化性デンプンを含む新品種米の圃場実験を実施し、過去6回、総量834キロの収穫に成功。恩納村で生まれたことにちなんで、品種名を「恩納-OIST-2020」と登録しました。その後品種名とは別に、県内で商標名の一般公募を実施し、広く愛される県産品にふさわしい名前として「ちゅらおとめ」が採用されました。

恩納村内にある圃場でのちゅらおとめの栽培
恩納村内にある圃場でのちゅらおとめの栽培
恩納村内にある圃場でのちゅらおとめの栽培

ちゅらおとめの効果とその評価

難消化米とは、ブドウ糖に分解されにくい性質をもつデンプンを高い割合で含んだ新しい品種の米で、約30年前に九州大学の研究チームが開発を始めました。難消化米には、血糖値の上昇を抑える効果をはじめ、血中中性脂肪とLDL(悪玉)コレステロールを低下させる効果、肝臓への脂質蓄積抑制効果を裏付けるデータも集まり始めており、肥満のみならず生活習慣病をトータルに予防する効果も期待されています。OISTの研究チームは、ゲノム情報を用いて難消化米を沖縄の気候に適した地産の品種と効率的に掛け合わせ、その性質を遺伝的に導入した結果、恩納村でのちゅらおとめの成育と収穫に成功しました。

そして2022年、神奈川県聖マリアンナ医科大学の中村祐太講師が率いるチームによって2型糖尿病を患う患者に対して実施した、ちゅらおとめ摂取による効果評価を行った結果、食後血糖値を通常米と比較して有意に低下させたことが確認されました。そのメカニズムとして、小腸上部だけでなく、小腸下部からの糖質の吸収が免れた可能性が消化管ホルモンの動態から示唆されるとしています。本研究の検証結果は、2023年3月に科学誌 Asia Pacific Journal of Clinical Nutritionに掲載されました。

Churaotome
OISTが恩納村と開発した新種の高機能米の名称を 「ちゅらおとめ」に決定した
OISTが恩納村と開発した新種の高機能米の名称を 「ちゅらおとめ」に決定した

今後の事業展開について

すでにちゅらおとめを活用した商品開発の検討が始まっています。玄米、白米との組み合わせ、米粉等、多様な用途で商品開発の可能性があり、近い将来OIST産、恩納村産、沖縄県産の食材としての活用に期待が寄せられています。

命名式に出席した恩納村の長浜善巳村長は、ちゅらおとめへの期待を次のように述べました。「恩納村で育ったちゅらおとめが県内、県外、海外で広く愛されることで、村の産業振興やOISTとの連携強化の契機となれば良いと思います。」

OISTのカリン・マルキデス学長は、多大な協力をいただいた恩納村に感謝を述べるとともに、「今回の恩納村とのコラボレーションを非常に誇りに思っており、このようなパートナーシップによる活動をさらに増やしていきたいと考えています」と話し、恩納村発の新たな県産品への期待を述べました。

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命名式の写真はこちらから:OIST Flickrアルバム

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