Deep Techをディープに語る -日本でもっと革新的技術を産み育てていくために-
2019年3月5日(火)に東京神田明神ホールで行われたOISTフォーラム2019のテーマは、「”Deep Tech”が進化させる社会」。200名を超える企業人、起業家、研究者や学生の方々と共に日本におけるディープテックを考え、推進していくきっかけとなるイベントでした。
まずは来場者同士が自己紹介するアイスブレークにより会場の熱気が高まったところで、左藤章内閣府副大臣、そして日本経済団体連合会審議員会副議長/起業・中堅企業活性化委員長で、アサヒグループホールディングス株式会社代表取締役会長の泉谷直木氏にご挨拶をいただき、OIST首席副学長ロバート・バックマン博士がOISTの紹介をしました。
基調講演で登壇したのは、OISTで独自の波力発電機を開発し、世界のエネルギー問題に挑もうとしている新竹積教授。開発プロジェクトを進めて来た中での苦労や、エンジェル投資家との出会い、そして現在モルディブで行なっている発電機の実証実験の状況などを語りました。
続いて、日本ディープテック協会理事で、Mistletoe株式会社CIO(Chief Investment Officer)の中島徹氏による講演が行われました。ディープテックとはなんなのか、そしてどうしたらディープテックを使ってイノベーションを起こしていけるのかについて、会場の皆がディープテックについて改めて頭の整理ができるようなお話しをいただきました。
パネルディスカッションでは、株式会社ディープコア代表取締役社長の仁木勝雅氏、株式会社ジーンクエスト代表取締役の高橋祥子氏、そして株式会社ユーグレナ取締役副社長で、リアルテックファンドのファウンダーでもある永田暁彦氏が登壇。
モデレーターを務めた株式会社ニューズピックスChief Content Officer の佐々木紀彦氏が、会場から寄せられた質問を混ぜながら、日本のディープテック起業で見られる課題をどのように解決していくのか、パネリストに問いかけました。
パネリストからは、ディープテックのシーズを作っている研究者自身による起業を進める上で、異分野間での交流が重要であること、そのために現在の日本に必要なのは、ダブルメジャー(大学で複数の異なる分野を同時に専攻すること)を可能とすることや、副業を容認することではという提案がなされました。
さらには、ディープテック系の起業の経験者が少ない現在の日本の状況を鑑みて、こうした起業を醸成するために、それぞれの立場の人がすべきことについて次のような具体的な意見が出されました。投資家は先行事例をどんどん作る努力をすること、スタートアップで成功した人は自身が大学で受け取ったものをお返ししたり、同じような成功者と繋がり、後輩の後押しをすること、また大企業は、それぞれの得意領域以外にも目を向けて、新たな視点で異分野の研究を評価すること、そして大学は、もっと海外から優秀な人材を取り入れる必要があること、などです。会場では、今後の日本のディープテックエコシステムを作っていこうという機運が高まりました。
イベントは最後に交流会に突入。交流会では、ディープテックで世界の変革を促そうとする研究チームや起業家がピッチをするステージが設けられました。イベントに参加した幅広い分野の人々が、それぞれ興味のある話に耳を傾けたり、会場で出会った人々と交流をもつ場面が見られました。企業で研究職をしているという参加者からは、「ディープテックについて興味深い考察を得られたばかりでなく、今日紹介された個別の研究に興味をもった。会社に帰って担当者にこの話をつなぎたい」という声が聞かれました。