沖縄海洋観測システム:サンゴ礁の生態系モニタリング
沖縄の海が育むサンゴ礁―サンゴ礁は漁業や観光業など、世界で年間3兆円、日本国内(沖縄、小笠原、奄美)で少なくとも2500億円の経済効果をもたらしていると見積もられています。そして、世界のサンゴ礁の中で生物多様性が最も高く、海洋生態系の「ホットスポット」とされるのが、太平洋とインド洋の境界水域で、沖縄周辺海域はその北限に位置します。
近年、沖縄沿岸の海洋は、海洋における資源の活用、環境保全など様々な観点からその科学的知見に基づく分析が求められています。サンゴ礁の生態系の変動を把握するためには、海中の海洋環境を調べる海洋観測が必要です。世界的にみてもサンゴ礁の生体変動を長期間行える研究拠点は数カ所しか存在しません。これまで、沖縄近海のサンゴ礁の環境観測および研究はその一部が明らかになっただけで、定点を連続的に海洋のダイナミックな循環機序や生物間相互作用を解析する拠点は沖縄にはありませんでした。
<海洋観測機器の設置>
そこで沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、沖縄美ら海水族館を抱える海洋博公園(沖縄県本部町)周辺海域のサンゴ礁に、米国ウッズホール海洋研究所が開発した水温、塩分センサー、化学、生物センサー等多目的センサーを搭載したリアルタイム観測機器を設置し、内閣府沖縄総合事務局国営沖縄記念公園事務所からの許可により、海洋博公園に設置したケーブル・サーバー等を経由しOISTへデータを伝達するシステムを導入しました。水深20メートル地点に設置されたこの観測機器は、年間を通して塩分、溶存酸素量、葉緑素量、流向や流速、波高や波長、海中のプランクトン等の水中映像をリアルタイムで記録し、これら生物学的データと周りの環境データはリモートサイトからアクセスできるようになっています。つまり、このシステムはこれまでの断片的、離散的であったサンゴ礁環境の海洋像から、海洋環境の長期変動を正確に捉えることを可能にする画期的な設備で、地理的優位性、機能性の観点からも、世界に類を見ない極めて重要な情報を発信することが期待されます。
<国際的海洋研究拠点をめざして>
さらに、OISTは海洋科学研究を進めるにあたり、一般財団法人沖縄美ら島財団と学術研究に関する包括協定を締結しました。これにより沖縄美ら島財団は、海洋博公園周辺海域等で継続して行っている、サンゴの白化調査を含むサンゴ礁モニタリング調査等での海洋生物に関する調査研究が、このサンゴ礁生態系観測のリアルタイムデータを活用することによって、一層高度で細かな解析が可能となることを期待しています。
このようにOISTは、世界最先端の海洋観測システムの導入により、関係機関と連携し、沖縄が国際的海洋研究拠点となることをめざし、海洋研究の促進を計ります。
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