【ポッドキャスト】国際リーダーシッププログラムの一環で南極を訪問したOIST研究者インタビュー

シーレ・ニコーマック教授が、地球環境保護分野における女性の影響力を高めることを目的とした「ホームワード・バウンド」プログラムに参加しました。

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OISTポッドキャストの最新エピソードでは、サイエンス・コミュニケーターのマール・ナイドゥが、OIST量子技術のための光・物質相互作用ユニットを率いるシーレ・ニコーマック教授にインタビューしました。 ニコーマック教授は「チーム・ホームワード・バウンド」の第6弾の一員としてアイランド・スカイ号に乗船、20日間の研修プログラムに参加し、交流を深めました。南極大陸を訪れるという貴重な機会を得たニコーマック教授が、その経緯や旅の見どころ、そして南極の未来について語りました。 

ホームワード・バウンドは、2016年に始まったプログラムで、STEMM(科学・技術・工学・数学・医学)分野の女性たちが地球の未来を形作る意思決定において、より大きな影響力を発揮することを目的としています。

  

サイエンス・コミュニケーターのマール・ナイドゥが、OISTポッドキャストでシーレ・ニコーマック教授にインタビュー
サイエンス・コミュニケーターのマール・ナイドゥが、OIST量子技術のための光・物質相互作用ユニットを率いるシーレ・ニコーマック教授に、ホームワード・バウンドへの参加と南極遠征について聞いた。 写真提供:エイドリアン・スコウ(OIST) 

リーダーシップ、持続可能性、影響力 

ホームワード・バウンドは、2030年までに1万人の女性リーダーを育成することを目指しています。これらのリーダーは、自分の地域に合った地球環境問題への取り組みにおいて、解決策を考えたり、他者に働きかけたりする役割を担います。 

プログラムでは、リーダーシップ、持続可能性、影響力の与え方に関するトレーニングが重点的に行われました。「特にリーダーシップに関しては、感情的なことが悪いことではないことや、これまで良いとされてきた冷徹で計算能力の高いリーダーシップが必ずしも前進に繋がるわけではないこと」などが教えられました。 

インターネットへの接続が限られている南極で、毎日リーダーシップの専門家を招いた集中的なワークショップやディスカッションが行われました。この環境は、参加者たちにとって戦略的に最適な場所であったとニコーマック教授は言います。「南極は外部の要因をすべて忘れられる唯一の場所で、プログラムに本当に集中できました。」 

当時、多くの科学観測所は新型コロナウイルスの影響で閉鎖されていましたが、一行はアンバース島のパーマー基地を訪れることができました。 

The Island Sky's route from Argentina to Antarctica and back
スカイ号の南極への航路と寄港地を示すグーグルマップ画像
プエルト・マドリンを出発し、アルゼンチンのウシュアイアに戻るアイランド・スカイ号の南極への航路と寄港地を示すグーグルマップ画像。寄港地にはパーマー基地、スパート島、キネス・コーブが含まれる。 画像制作:Ruby Kan 

ニコーマック教授は、南極を訪れるという貴重な機会を得たことに加え、マスツーリズムの影響が強まる中で、この手付かずの自然環境を探索することへの罪悪感についても語りました。環境への影響を考慮し、私たちの選択が本当に必要かどうかを批判的に評価することが重要だと強調しています。 

量子技術のための光・物質相互作用ユニットを率いるニコーマック教授は、多様性と公平性の取り組みを通じて、国際的なOISTの中でも最も多様性のある研究ユニットの育成に積極的に取り組み、模範となっています。「努力を続ければ、その方法が見つかります。多くの人は積極的でないかもしれませんが、一度積極的に行動を起こせば、それが自然に身につくようになります」とニコーマック教授は私たちに励ましの言葉を送ります。  

南極の未来  

一緒に乗船した極地専門家は、地球温暖化が南極大陸に与える影響の顕著な例として、氷山の大量融解、特定のペンギン種の個体数減少、植生の変化を挙げました。 

「最初に影響を受けるのが島であり、私自身も島出身で、今も島に住んでいます」とニコーマック教授は語ります。「沖縄のような場所にとって、これは本当に重大な問題です。」 

Homeward Bound participants hiking in Antarctica
A penguin colony in Antarctica
A seal lazing on a beach in Antarctica
Juvenile penguins waiting for their parents to return
A juvenile penguin and parent
A view of the vessel Island Sky in Antarctica
シーレ・ニコーマック教授が見た南極の美しい自然と、参加した様々な活動。
シーレ・ニコーマック教授が見た南極の美しい自然と、参加した諸活動。写真提供:シーレ・ニコーマック(OIST) 

南極条約は、先住民のいない唯一の大陸である南極大陸を商業的および軍事的な搾取から守っています。しかし、多くの国がこの条約を締結しておらず、これらの国の国民には環境保護に関する規則が適用されません。 

ニコーマック教授はアイルランド出身ですが、アイルランドは条約を締結していないため、特定の規則に従う義務がないと言います。「ここでは例え好き勝手しても法律に違反しないというのが不思議でした。周りの人が『そんなことはやってはいけない!』と言っても、実際に取り締まる法律がなければ、南極から何かを持ち帰ることができてしまうのです」とニコーマック教授は説明します。 

ニコーマック教授は、観光の拡大と南極条約の再検討がもたらす影響を懸念しています。2048年に条約の再検討が行われ、改正される可能性がありますが、これが大陸の資源の大規模な開発につながる恐れがあります。また、無秩序な観光客の増加や関連インフラの開発により、手付かずの自然環境が脅かされる可能性もあります。 

シーレ・ニコーマック教授の南極体験についての詳細は、こちらのポッドキャストエピソードでお聞きください。 

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