OIST新研究棟を開設:オープンで現代的な空間が、分野の垣根を越えた研究を促す
沖縄科学技術大学院大学(OIST)に新設された第5研究棟は、研究者や学生間の密な交流と学際的な共同研究を促進する空間設計が施されています。約6年前に設計が着手され、建設期間は2年半以上に及びました。本研究棟には、OIST量子技術センターや理論科学客員プログラム(TSVP)センターのほか、様々な研究ユニットが順次入居する予定です。
延べ床面積約16,000平米の本研究棟は、中央の吹き抜けをはさんで北側のウェットラボと南側のドライラボに分かれています。装置や薬品を用いた実験等を行うウェットラボ側は、各階の高さが6メートルあり、柔軟に実験関連装置の設置ができるように天井裏にスペースが設けられています。一方、コンピューターを用いた理論研究等を行うドライラボ側は、各階の高さが4メートルとなっています。このような設計にすることで、3階建てのウェットラボと4階建てのドライラボを1つの建物内に共存させることができ、空間を機能的に最大限活用できるようになっています。
ウェットラボとドライラボをつなぐ中央の吹き抜け空間には、各階をつなぐ橋や階段が設置され、見通しの良い空間を生み出します。また、開放的な空間のアクセントとして木目調のボックスルームを所々に設置し、小さな会議を行ったり、憩いの場として使用することができます。
OISTのスコット・ルディセル副学長(施設管理担当)は、第5研究棟が完成したことで、100名の教員を受け入れる体制が整ったと話します。「本研究棟は、開放的な研究環境をコンセプトにしています。多数の共用スペースが設置され、講義やプレゼンテーション、セミナーなどに利用できるようになっています。今後は、科学と芸術が共存するような空間として、地元の芸術家の作品の展示や企画展などを行っていければと考えています。」
第5研究棟に研究室を構えるため機器の設置を進めているのは、OISTに着任して間もない合田裕紀子教授です。合田教授が率いるシナプス生物学ユニットでは神経科学の研究を行っており、脳内で神経細胞がどのようにコミュニケーションをとり、そのコミュニケーションの変化が動物の行動をどのように制御しているかに関心を持っています。なかでも、脳内に神経細胞と同数程度存在するアストロサイト(星状膠細胞)という細胞の機能に注目して研究を行っています。
合田教授は、「人々の交流の促進を重視した空間には、腰かけて話せるようテーブルが多く設置されています。OISTはボトムアップ型の研究環境を大切にしているので、好奇心旺盛な若い研究者と共に研究ができる素晴らしい環境です。ユニットを成長させながら他の研究者との新しい共同研究プロジェクトを始めていきたいです」と述べています。
実験動物セクションのリサーチサポートリーダーであるチェンチー・ワン博士は、第5研究棟に新たに設けられた動物実験施設の管理を担当しています。今年12月には、飼育ケージとトンネル型洗浄機を扱うロボットシステムの設置が完了する予定で、「パワフルな自動洗浄ロボットシステムの導入により、メンテナンスに係る労力が減り、時短にもなるうえ、国際的な動物福祉の水準に基づいた質の高い動物管理ができるようになります」と説明しています。
同施設において実験動物の管理が人道的に行われるよう、3年毎に民間非営利団体AAALAC International(国際実験動物ケア評価認証協会)が運営や進捗状況を厳しく評価します。ワン博士は、この施設について、国内有数の優れた動物管理施設であり、世界でもトップレベルを目指していると述べています。
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