OISTの学生がヨーロッパのハッカソンで入賞
Qiskit Hackathon Europe 2021は、ヨーロッパ中から研究者やデベロッパが集まり、量子コンピューティングのプロジェクトを共同構築するイベントです。4月20日から6月14日まで開催された同イベントは、2段階構成となっています。第1段階では、チーム別にアイデアを提出しました。それから2週間後に審査員によって選出された20チームが、第2段階に進みます。第2段階では、1ヶ月間にわたって集中的にプロジェクトの共同開発が行われました。
(Institut de Ciencies Fotoniques)の博士課程学生であるKorbinian Kottmannさん、Joana Fraxanetさん、Niccolò Baldelliさんと共にQuantum Anomaly Detection Team(量子異常検知チーム)を結成しました。
「ハッカソンへの出場は、私のやってみたいことの一つだったのですが、素晴らしい経験になりました。チームで密に連携して、短期間で集中的に取り組みました」とフリデリケさんは振り返っています。
OISTでは量子システム研究ユニットに所属しているフリデリケさんですが、今回のコンテストではドイツに滞在し、他の研究機関の研究者と共同プロジェクトを行いました。フリデリケさんのチームは、系に対する予備知識がなくても量子システムの位相を分析できる量子機械学習技術の開発に取り組みました。
量子力学における系は規模が非常に小さく、孤立した1~3粒子間の相互作用が重要になります。この相互作用を支配する法則は、物質が特定の予測可能な振る舞いをする古典的な日常世界とは全く異なるもので、一カ所で生ずる作用が遠く離れた原子に強い影響を与えることがあります。未知の部分がまだ多くありますが、物理学界ではこのような系のさまざまな位相を分析することで知見を得ようとしています。
位相は、古典的な世界にもあります。フリデリケさんは水を例に挙げ、液体、気体、氷の3種類があると説明しました。量子の世界における位相は、質量もエネルギーも通過できず外部からの影響を受けることなく閉ざされている孤立系の中における粒子のさまざまな配置を意味します。
「物理学者は、これらの系がいくつの位相を持っているのかを解明しようとします。しかし、そのためには、直感や予備知識が必要です。私たちは、この要件を排除するために、量子機械学習の技術を開発することにしました」とフリデリケさんは説明しています。
「このアイデアは、以前に古典的な機械学習技術を使って同様の研究を行ったチームメイトから出たものです。私たちは、量子デバイス上で完全なアルゴリズムを直接実行できる量子機械学習を使うことにしました。最初の2週間は、かなりリラックスした雰囲気で、アイデアを整理して提出しました。楽しかったですが、一日中取り組んだわけではありませんでした。でも第2段階まで進むと、私たちチームのアイデアがうまく機能しており、勝算があることを実感できました。それが良いモチベーションとなり、私たちは全力で研究に取り組み始めました。」
最終的に、計3つのチームが入賞し、それぞれ3000ユーロの賞金を獲得しました。また、各メンバーには景品が授与されました。
Quantum Anomaly Detection Teamは、今回のコンテストの研究成果についてプレプリント論文を執筆し、近日中に発表する予定です。
フリデリケさんは、次のように語っています。「本当に楽しくて、実りある経験になりました。参加を申し込んだときは入賞するとは少しも思っておらず、ただ経験してみたかったのです。でも、たった6週間で論文を書けるほどの研究ができました。良いチームと縁があれば、ぜひまた出場して一緒に研究を行いたいです。」
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