BioAlchemy社:地産地消の排水処理
生活や産業から出る排水は、複雑な処理施設と下水システムを経て処理されています。必要な設備やインフラが整っている都市部では容易ですが、開発途上や無電化地域ではまだ課題が多く、近年では排水処理の分散化や局所的に処理する方法が望まれています。
このような排水処理装置の製造を目的とした、BioAlchemy株式会社が、沖縄科学技術大学院大学(OIST)から新しいスタートアップ企業として設立されました。イゴール・ゴリヤニン教授が率いる生物システムユニットから誕生し、現在沖縄県内の事業者を支援しています。とくに沖縄県では排水の排出基準の厳格化が執行される予定で、現在多くの企業が解決策を模索しています。 BioAlchemy社は、そのような企業の排水コストを削減し、企業の成長を手助けしていきたいと考えています。
BioAlchemy社の処理装置は嫌気性細菌を利用して有機物を分解しながら電気を発生する微生物燃料電池(MFC)という技術を用いています。 バクテリアにより廃水から有機物が取り除かれ、排水基準を満たすレベル、または再利用できるほどきれいな水に生まれ変わります。 微生物燃料電池はごくわずかな電力で機能するため、無電化の場所でも排水処理が可能となります。
「科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(START) と沖縄県から支援していただき、処理装置のプロトタイプを作ることができたたことに感謝しています。」とBioAlchemyのCEO井上智晴さんは述べます。 「実験室の枠から実用化を見据えたプロトタイプの製造を実現できたのは、県内企業と連携する事で得られた現場ノウハウはもちろん、OIST技術開発イノベーションセンター(TDIC)や学内支援POCプログラムのおかげです。」
あらゆる機会を捉えて
POCプログラム「OISTブルーフ・オブ・コンセプトプログラム」はOIST の技術開発イノベーションセンター(TDIC)から提供されており、運営、市場調査、メンターシップなどビジネスにおける総合的サポート、およびビジネス技能習得を活用してBioAlchemy社は起業することができました。また現在 3つの特許を保有しており、世界最大容量のMFC処理装置など、数多くのプロトタイプの作成に携わり、蒸留所、工場、および食品生産業者において試験運用されました。
BioAlchemy社の次の計画では、排水処理装置の発電する能力をさらに発展させ、アンモニアやリンなどの不純物を除去できるように開発中です。 現在申請中の特許が出願されれば、日本だけでなく世界中の様々な産業に役立つ処理装置を製造できるようになります。
「クリーンな水と衛生環境は、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の1つであり、今後の社会の最優先課題です」とイゴール・ゴリヤニン教授は言います。 「OISTの研究室では、この技術をさらに発展させ、普及させるためにBioAlchemy社と協力していきたいと思います。」
OIST技術開発イノベーションセンター(TDIC)について
OIST の技術開発イノベーションセンター(TDIC)では、OISTや県内外、国外企業との橋渡しを行っており、技術革新による経済成長を加速させる活動をしています。OISTの世界的研究者、世界基準の研究施設、国際的学術環境、冒険心に溢れた文化を活用して、研究室の発明を社会的貢献、経済的利益につながるような革新技術へと発展させることを目指しています。
詳細については、https://groups.oist.jp/ja/tdicをご覧ください。
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