磯田昌岐博士が自己と他者の動作を区別する仕組みを細胞レベルで初めて解明
自己と他者の動作を区別する仕組みを細胞レベルで初めて解明
― 「人の振り見て我が振りなおせ」に前頭葉の内側領域が関与 ―
独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構(シドニー・ブレナー理事長)の磯田昌岐代表研究者(神経システム行動ユニット)らの研究グループは、動物の前頭葉*1の内側領域の神経細胞が自分の動作と他者の動作を選択的に処理することを明らかにしました。
これまでサルの実験などから、自分自身が餌をとるなどの動作をするときにも、また、他者が同じ動作をしているところを観察するときにも、同じように活動する神経細胞、いわゆる「ミラーニューロン」が脳に存在することが知られていました。しかし、この神経細胞の働きだけでは自分と他者の動作を区別することができないという指摘が長い間なされてきました。本研究では、ニホンザルが自分の前にいる他のニホンザルの行動を読み取り、その情報から自分が適切に行動する実験をさせました。その結果、脳の中で自分の動作と相手の動作を区別する神経細胞が、前頭葉の内側領域にあることを突きとめました。この発見は、複雑な社会的認知機能の脳内メカニズムを、霊長類のサルを用いて、細胞レベルで研究することができることを示した点で画期的です。また、自己と他者の動作の区別が困難になる精神神経疾患の病態解明に貢献できる可能性があります。
本研究成果は、米国科学誌Current Biology(カレントバイオロジー)のオンライン版に1月21日(現地時間1月20日)に掲載される予定です。本研究は、独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構の磯田昌岐代表研究者、東京大学大学院医学系研究科 脳神経外科学の大学院生の吉田今日子と東京大学大学院医学系研究科/東京大学医学部附属病院 脳神経外科学の齊藤延人教授、独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター象徴概念発達研究チームの入來篤史チームリーダーとの共同により行われました。また、独立行政法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業の一環として行われ、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」の支援を受けました。
【発表論文 詳細】
- 発表先および発表日:Current Biology(カレント バイオロジー)
- 論文タイトル:Representation of Others’ Action by Neurons in Monkey Medial Frontal Cortex サルの前頭葉内側皮質細胞による他者動作の表現
- 著者:Kyoko Yoshida, Nobuhito Saito, Atsushi Iriki, Masaki Isoda
【お問い合わせ先】
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独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構(http://www.oist.jp)
神経システム行動ユニット
代表研究者 磯田 昌岐(イソダ マサキ)
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