沖縄周辺海域でマイクロプラスチックを検出した新たな手法
沖縄科学技術大学院大学(OIST)の量子技術のための光・物質相互作用ユニットは、沖縄周辺の海に小さなマイクロプラスチックが存在することを研究で明らかにしました。この研究はScience of the Total Environmentに掲載されました。
「海洋中の大きめのプラスチック片については、かなりの研究が行われてきました。しかし、大きさが5ミリメートル未満の小さな破片は注目を浴びていないので、それらが存在するかどうかや、生物に与えるかもしれない影響を特定することが重要であると考えました」と、同ユニットの博士課程の学生で、論文の筆頭著者であるクリスティーナ・リプケンさんは述べています。
沖縄は、この研究を行うために適した場所であると言えます。日本列島の南に位置する亜熱帯の島で、周囲をサンゴ礁に囲まれているため、海岸周辺の海は表層水と風の影響を受けます。また、この島は「ブルーゾーン」と呼ばれる長寿の島でもあることから、研究チームは、住民の健康に影響を及ぼす可能性のある海洋汚染をモニタリングすることが重要であると考えました。
クリスティーナさんは沖縄県庁と連携し、2018年9月にサンプルの採取を実施しました。訪れたのは、島の海岸線に近い6地点です。さまざまな地域を調べるために、島の南側、中部付近、北側のそれぞれ2カ所ずつを訪れました。沖縄県の県庁所在地である那覇では、工業港や空港付近からサンプルを採取しました。那覇市は推計人口が30万人を超えており、沖縄県の総人口の4分の1を占めています。対照的に、本島の北端に位置する辺戸岬は人口が非常に少なく、自然の残る地域です。
各地点では、トロール網で約1キロメートルにわたって表層水をすくい、約800リットルの水をろ過して小さな粒子を取り出しました。その後、これらの粒子をOISTの研究室で分析しました。
クリスティーナさんは、量子技術のための光・物質相互作用ユニットのスタッフサイエンティストであるドムナ・コツィファキ博士と協力して研究に取り組みました。コツィファキ博士は、光ピンセット技術と顕微ラマン技術という2つの技術を組み合わせて、粒子を分析する全く新しい方法を提供しました。
光ピンセット技術は、レーザーを使用して液体中の粒子を捉え、顕微ラマン技術は、各粒子に特有の分子指紋を識別します。これにより、有機物、微量金属、ポリエチレンやポリスチレンなどのさまざまな種類のプラスチックが存在するかどうかを正確に確認することができました。
「この手法は、海洋マイクロプラスチックに関して、私たちの研究と他の研究との間に一線を画すものです。最初にプラスチックを取り出す必要がないので、有機物の中にプラスチックが埋め込まれているかどうか、あるいは微量金属が存在するかどうかを確認したり、サンプルとして採取した海水中のプラスチック濃度を調べることができました」とコツィファキ博士は言います。
予想どおり、研究では、島の北側よりも南側から採取した水の方がプラスチックが多いことを発見しました。しかし、驚くべきことに、プラスチック濃度は、特に工業化された地域よりも、人が住んでいる場所との相関性が高いことがわかりました。
また、すべての箇所のサンプルからプラスチックが見つかったことも気がかりです。
サンプルから見つかったプラスチックの75%以上はポリエチレン製で、壊れた釣具、ペットボトルのキャップ、家庭用品、ビニール袋、プラスチック容器、包装などに由来するものであろう、と研究チームは推論しました。
「漁村では、魚が水揚げされる港や浜辺で、漁業者たちがポリマーで編んだ袋を使って物品や魚を保管したり運搬したりしています。これが、プラスチックの小さな破片が海に流出する経路の一例である可能性があります」とクリスティーナさんは説明します。
もう一つの経路は、道路の粉塵に含まれるプラスチックに由来するものです。最近の研究では、沖縄の都市化が進み自動車の交通量が多い地域の道路から採取した粉塵サンプルから、高濃度のマイクロプラスチックが検出されました。この道路の粉塵の一部が、沖縄周辺の海で見つかっているかもしれません。
「私たちは、調査したすべての地域でプラスチックを見つけました。それらは、工業化が進んだ島の中心部や北部の農村部よりも、南部の都市化が進んだ地域でより多く発見されました。私たちの新たな手法によって、沖縄周辺のマイクロプラスチックの存在をより明確に把握することができ、それがリスク分析や政策に影響を与えることにつながる可能性があります。これが環境研究を盛り上げる一助となることを願っています」と論文筆頭著者のクリスティーナ・リプケンさんは述べています。
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