注目のサウンド
Image credit: Nick Luscombe
「サウンドトラックのアイデアを練っていたとき、島中で録音されたさまざまな自然界の音を入れるだけでなく、琉球の響きの中でも最も象徴的な音の一つである三線を加えるのもエキサイティングだと思いました。三線は沖縄や奄美諸島の民謡の魂として広く知られています。
新垣睦美氏は、この楽器の世界で最も偉大で革新的な演奏家の一人であり、5月下旬のある日の午後、OISTのメディアスタジオでの収録に快諾してくれたことをとてもうれしく思っています。
彼女は単音やシンプルなメロディラインを演奏し、爪で弦をこすったり、蛇革で覆われた三線のボディを叩いたりして実験的な演奏をしてくれました。
今回、得られたサンプルは、自然音や加工された環境音とミックスし、新たな音のレイヤーを加えることができました。」
ニック・ラスカム
写真提供 嵩原健二
ヤンバルクイナは沖縄を代表する鳥です。やんばるの森にのみ生息し、地元の人々に親しまれています。翼が短く、尾羽がほとんどない飛べない鳥です。葉が生い茂るジャングルの下草の中を走りながら餌を探す姿が見られます。よく発達した脚を持ち、短い距離なら時速40キロで疾走します。残念ながら、そのため車に轢かれやすいのです。やんばるを訪れる際は、くれぐれも慎重に運転し、この特別な鳥に注意してほしいです。
オスもメスも人間の目には同じ姿をしているように見えます。背中と翼はわずかに緑がかった茶色で、胸には黒と白の縞模様があり、脚とくちばしは鮮やかなオレンジ色、目は赤く、顔の両側に白い線があります。成鳥は日没後に徘徊するハブを避けるため、夜間は木の上で寝ます。小さな群れで見られることもありますが、単独やペアで見られることも多いです。親鳥はヒナが自分で木に登れるようになるまで、地面でヒナを誘導します。
かつて彼らの最大の脅威はマングースでしたが、やんばるではマングース根絶に取り組み、ヤンバルクイナの生息数は改善されつつあります。それでもなお、生息地の減少、交通事故、家猫などの脅威に直面しています。
やんばるで聞くことのできるヤンバルクイナの鳴き声は2種類あります。一つは「ケッ、ケッ、ケッ」と長く大きな鳴き声で、数秒間続きます。運よく近くにいれば、鳴き声とともに、非常に低い音程のドラミング(太鼓のような音)が聞けます。鳴き声が続くにつれ、徐々にピッチが下がり、最後には止まります。二つ目の鳴き声は一つ目よりははっきりしません。ピッチが上がる短い小刻みなさえずりです。
出典:平成28年度ヤンバルクイナ保護増殖事業ワーキンググループ 『ヤンバルクイナやんばるの森を歩む鳥』 環境省やんばる野生生物保護センター
カサンドラ・ジョージ(OKEON 美ら森プロジェクト)
写真提供 嵩原健二
ノグチゲラは、沖縄本島北部のやんばるの森にのみ生息する絶滅危惧種です。沖縄に2種しかいないキツツキのうち、大型の種です。コゲラはもっと小さく、日本全国に生息しています。
興味深い点は、ノグチゲラはキツツキの中で唯一、木の上と地面の両方でドラミングをすることが知られています。セミの幼虫、アリ、クモを捕食するために、地上でドラミングをします。エサは土中の昆虫と、樹皮や木の中に隠れている昆虫の両方です。地面で採食する際のこの行動のために、侵略的なマングースや野良猫に狙われやすくなる可能性があります。
オスとメスの外見はよく似ており、翼、尾、顔は暗褐色で、胸と背中は暗赤色をしています。頭上はオスが鮮やかな赤色であるのに対し、メスは暗褐色です。巣作りと採餌のために、特殊な形をしたくちばしで木に穴を開けます。ノグチゲラの巣が役目を終えた後は、リュウキュウコノハズクやシジュウカラなどが巣として再利用します。
ノグチゲラは一夫一婦制で、長年寄り添い、10年以上続くこともあります。ペアを変えるのは、前のシーズン以降にパートナーが死亡した場合のみです。ペアは同じテリトリーかその近くに何年も留まる傾向があり、オスもメスも非常に縄張り意識が強いです。喧嘩は同性の個体間で起こることがほとんどで、オスとメスが喧嘩するのはほとんどありません。
ノグチゲラは非常に珍しく、特別な存在です。絶滅の危機に瀕しており、私たちはこの鳥たちを支援するために、最善を尽くさなければならなりません。1880年代には恩納村まで分布していましたが、今ではやんばるに押しやられている状況です。以前の分布域を回復させるため、環境省と沖縄県は法令等によりノグチゲラの営巣地の保護に取り組んでいます。
ノグチゲラを見つける最も簡単な方法は、木のドラミングです。それは鋭く、明瞭で、速いリズムのドラミングで、1回に鳴く時間は1秒にも満たないです。それに比べ、コゲラの鳴き声はもっと速く、短く、柔らかいです。コゲラは採餌や巣作りの際に鳴き声を発します。もう一つの鳴き声は、非常に短く繊細なさえずりで、しばしば空を飛んでいる最中に発します。
出典:小高信彦 (2011) ノグチゲラ バードリサーチ ニュース 2011年4月号 Vol.8 No.4
カサンドラ・ジョージ
写真提供 Yoko Shintani
「長年の夢だったのは、健全なサンゴ礁の音を録音し、そこで生命が活動し、多彩で美しい水中のざわめきが奏でる不思議な音を聞いてみたいということです!
2024年6月、ハイアット リージェンシー ホテルの方々とOISTの海洋気候変動ユニットのジェフリー・ジョリーと一緒にボートに乗って、サンゴ礁に向かったとき、非常にワクワクしたのを覚えています。私は2本のハイドロフォンを海にそっと落とし、ヘッドフォンで、魅惑的な水中の音の風景を聴きながら、録音することができました。
何年か前、私はロンドンで開催されたあるイベントに参加しました。そこでは、聴衆に健全なサンゴ礁の生き生きとした音と、不健全なサンゴ礁の不毛で寂しい音を聴かせていました。この二つの違いは印象的で、海の生命の活気と死の両方を伝える音の力にも驚かされました。また、非常に感動的な体験でもありました。音には映像がなくても力強いイメージを伝える力があること、そして科学にとって音は貴重な研究ツールとして使えることを実感しました。
6月のあの日に私が録音した音は、サウンドトラックの一部となっています。"カチッ "とか "ポン "という音は、埃をかぶった古いLPの溝の表面の音のように聞こえます。」
ニック・ラスカム
写真提供 嵩原賢二
「アカヒゲ」は琉球列島のほとんどの島で見ることができます。渡りをする亜種もいますが、ここ沖縄本島に生息するアカヒゲはほとんどが一年中、本島内で過ごします。やんばる周辺のうっそうとした自然林を好みます。この鳥の特徴は、鮮やかなオレンジ色の羽、背中、尾、頭部です。オスは顔と胸に黒い羽があり、腹は白いです。メスは胸がくすんだ灰色で、腹は白く、赤い羽はややくすんでいます。
オスとメスは協力してヒナを育て、1シーズンに3羽のヒナを産むこともあります。メスは巣を作り、卵を孵化(ふか)させます。孵化した後は、オスとメスの両方がヒナに餌を与え、ヒナが巣立った後もそれを継続します。2回目、3回目の孵化では、メスが巣を作り直し、新しい卵を孵化させ、オスは以前のヒナに餌を与え続けます。幼虫、クモ、ムカデ、ミミズなど、主に土から採った昆虫を食べ、時には果実も食べます。
この鳥の鳴き声で最も特徴的なのが繁殖期の鳴き声です。第一音の高音と低音の独特な組み合わせが特徴です。この鳴き声はアカヒゲのすべての亜種で聞くことができますが、地域や個体によって多少の違いがあります。他の多くの鳥とは異なり、美しい鳴き声で鳴くのはオスだけではありません。
出典:関伸一 (2012) アカヒゲ バードリサーチニュース 2012年1月号 Vol.9 No.1
Cassondra George