初代客員アーティストー「コーラルカラーズ 」by スプツニ子!

科学とアートには深いつながりがあります。どちらも創造性や観察力、そして革新を通じて、私たちを取り巻く世界を探求し解釈する手段を提供します。アーティストは科学的発見からインスピレーションを得て、複雑な概念を視覚、音、パフォーマンスとして表現します。一方で、科学者はデータの可視化やアイデアの伝達、想像力の喚起において、アート的な技法を取り入れることがあります。

2024年2月、沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、テクノロジー、ジェンダー、フェミニズムをテーマにした数々の作品を生み出してきたスプツニ子!氏を本学の初代客員アーティストとしてお迎えし、アートと科学の融合を探るパイロットプロジェクトが始動しました。この1年弱、スプツニ子!氏はOISTの科学者たちと対話を重ね、OISTの研究からインスピレーションを得て、科学データを基盤としたアート作品の制作に取り組みました。

スプツニ子!氏が選んだテーマは、近年の気候変動の影響で危機にさらされているサンゴ礁です。OISTが位置する沖縄は、生態学的に豊かな海洋環境に囲まれており、海洋科学はOISTにおける主要な研究分野の1つとなっています。

こうした対話の結果として誕生したのがオンチェーン生成アート作品「Coral Colors(コーラルカラーズ)」と、その展覧会です。サンゴ白化の危機を広く伝え、地球温暖化の影響への意識を喚起することを目指しています。このプロジェクトには、OIST海洋気候変動ユニットを率いるティモシー・ラバシ教授が科学的アドバイスとデータを提供しました。

サンゴ礁が語る気候変動の危機

サンゴ礁は、その壮麗な美しさで知られると同時に、多様な海洋生物の生息地として重要な役割を果たしています。しかし近年、地球温暖化の影響によりサンゴ礁の白化という現象が深刻化し、これらの生態系は大きな脅威にさらされています。海水温が過度に上昇すると、サンゴはストレスを受け、共生する藻類(褐虫藻)を対外に排出してしまいます。この藻類は光合成を通じてサンゴに栄養を供給する重要な存在で、失われるとサンゴは白化し、最悪の場合は死に至ります。

2024年夏、沖縄近海および離島周辺では海水温が過去15年の平均を最大1.6℃上回り、記録的な高温となりました。この異常気象は、沖縄のみならず世界中のサンゴ礁に前例のない規模の白化現象をもたらしました。

「コーラルカラーズ」は、サンゴ礁の美しさと環境変化への脆弱性を視覚的に描き出した作品です。この作品に描かれる色の変化は、沖縄のサンゴ礁が過去124年間に経験した海水温の変動を反映しており、特に近年急速に進む地球温暖化の影響を浮き彫りにしています。

本プロジェクトは、こうした課題への意識を高めるとともに、資源を提供し、台風による波を防ぐ自然の防波堤として沖縄を支えてきたサンゴ礁を守るため、私たちに何ができるかを問いかけます。

展覧会について

「コーラルカラーズ」展は、2024年11月29日にOISTのトンネルギャラリーにて開幕します。12月7日には、スプツニ子!氏がOIST講堂で開催されるトークイベントに参加し、科学、芸術、テクノロジーの交差点について語ります。その後、これらの作品はデジタル資産(オンチェーンアート)として販売され、購入者はデジタル上で作品の所有権を得ることができます。これはOIST初の試みとなります。

このアート作品は、ジェネラティブアートの主要なプラットフォームであるイーサリアムベースのオンラインプラットフォーム「ArtBlocks(アートブロックス)」にて公開されます。オンチェーン生成アートという新たな領域に挑戦することで、OISTはより広い層の方々とつながり、科学やテクノロジーを学ぶ独自の視点を提供するとともに、人類の利益に資する研究を支援するための資金を募ります。「コーラルカラーズ」の売上の一部は、OISTの科学研究を支援するために活用されます。

私たちとともに、沖縄、そして世界のサンゴ礁保護への意識を高め、行動を起こす力を広げていきませんか。未来の世代のために、この貴重な生態系を守るための活動を広げていくには、皆さまのご支援が必要です。ぜひご協力ください。


スプツニ子!氏のウェブサイトはこちら:
https://sputniko.com/
「コーラルカラーズ」オンチェーンアート販売はArtBlocksにて12月20日から開始します。リンクは後日、このページでご案内いたします。