OISTとOne Young World Japanが次世代の日本を担う社会起業家の育成を支援
世界中で喫緊の環境問題に対する取り組みが広がるなか、社会的責任や持続可能性をビジネスモデルや意識に取り入れることができる若いリーダーの育成が極めて重要になっています。次世代のリーダーたちに投資するべく、OISTは、一般社団法人One Young World Japan Committeeと共同で、スプリングキャンプを開催しました。ワン・ヤング・ワールドは次世代リーダー向けの世界最大級のグローバルプラットフォームで、OYWJはその日本支部です。
2023年3月21日から25日にかけて行われたキャンプには日本全国から30名の高校生が参加し、そのうちの10名は沖縄県内からの参加者でした。全国から選出された高校生は、様OISTが位置する恩納村が現在抱える未解決の環境問題に対して実現可能な解決策を模索するワークショップに取り組みました。
今日、私たちが直面している複雑な課題の解決には、社会のさまざまな組織や多くの人々のサポートが必要です。このことを踏まえ、今回のキャンプでは高校生のリーダーシップ・スキル及び能力を伸ばすことに重点を置き、イノベーションを促進する環境を作ることで、参加者が様々なアイディアを試せる機会を提供しました。
様々な体験型セッションが行われ、参加した高校生は、第一線で活躍する起業家、研究者、行政職員など、社会のロールモデルであるゲストとの対話を通して学びを得ました。
恩納村は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた優れた取り組みを行う地方自治体として、国が選ぶ「SDGs未来都市」に選定されています。恩納村博物館で行われたフィールドワークでは、村の特色や17のSDGs目標達成に向けた取り組みについて学びました。参加者たちは、地域社会とパートナーシップを築き、エコロジー(環境)とエコノミー(経済)の両立を目指しながら、すべての人にとって持続可能な未来を実現するために協力していくことの意義について理解を深めました。
また、ビジネス成功の鍵である、イノベーションについても学びました。戦略的思考力を身に着けるべく、高校生たちは、自分が提案した解決策について様々な要素を検討し、目標達成に向けた最善のアプローチを見出すための双方向型のセッションが行われました。
セッションを指導した福岡雙葉高等学校の長村裕先生は、私たちが直面している社会・経済・環境問題のなかで最も複雑な問題を解決するには、イノベーションを起こすための計画をしっかりと立てることの重要性を伝えました。、参加した様々な登壇者たちは、自身の経験や専門知識の共有を通して、参加者たちを鼓舞しました。例えば登壇者の一人のFriends of the Plau National Marine Sanctuaryの広報コーディネーターであるKristin Uduiさんは、海洋保護の取り組みの成功例として、旅行者全員にパラオの環境保護への協力を義務付けるパラオの「パラオ・プレッジ(Palau Pledge)」を紹介しました。
また、社会起業家であり、OIST発のスタートアップ、EF Polymer株式会社を創業したナラヤン・ラル・ガルジャールさんは、水不足の問題と生ごみなどのバイオ廃棄物問題を同時に解決する革新的な生分解性ポリマーを使ったビジネスモデル構築までの経験を紹介しました。日本のペットボトル廃棄削減を目指して全国の給水スポットを網羅できるアプリを提供するmymizu社の共同創設者、ルイスロビン敬さんのセッションでは、永続的な変化を生み出す起業をするために必要な取り組みについて紹介しました。
キャンプでは、OISTの英語教師ジャスティン・フォスターサザーランドさんによる、英語のプレゼン力を高めるための講義も行いました。
参加した高校生の一人は、「全国から集まった仲間と意見交換をして、理解を深めることができました。OISTで自分のように夢を持ち、それを成し遂げた世界的な専門家や多くのロールモデルの方々と話し、学ぶ機会となったので、参加して本当によかったと思います」と感想を述べました。
キャンプ最終日には、高校生が7つのグループに分かれて2030年までに恩納村に持続可能で調和のとれた環境を作るための革新的で実現可能な解決策を発表しました。そして、OISTの研究者、恩納村役場の職員、ワークショップ登壇者による識者パネルが審査を行った結果、恩納村の観光客の増加による環境への悪影響を最小限に抑えるための「ディープ・エコロジカル・ツーリズム」のアプローチとして、環境に配慮した行動や予約システム、自然保護休息日の指定や、包括的な環境教育の実施を提唱した「LightUp」プロジェクトが最優秀賞に輝きました。
作者:メガ・カルラ