研究の連携を促進する新しい形のシンポジウム

OISTでは小規模のシンポジウムを立ち上げ、研究のタイムリーな共有化を目指します。

  今年、沖縄科学技術大学院大学(OIST)では、最新の研究成果をめぐって世界各地の研究者らが意見交換をおこなうミニシンポジウムと呼ばれる新たな形式のシンポジウムを複数開催しています。

  これらのミニシンポジウムには、世界中から専門家が10名ほど参加し、数日間にわたり古生物DNAや、光や物質の量子制御、先端的がん治療機器など、具体的な研究テーマについて議論します。学外から招聘された参加者およびOISTのオーガナイザーである研究者ら全員が、ミニシンポジウム開会中に個々の研究内容を発表し、お互いの視点を交えた専門的な議論を展開します。

  通常のOISTワークショップは最長3週間の周到に計画されたカリキュラムで、その準備には2年ほどかかりますが、ミニシンポジウムの準備は半年以内で済みます。

  先月、「小脳微小回路に関する最新の知見」と題するミニシンポジウムを主催したOIST計算脳科学ユニットを率いるエリック・デ・シュッター教授は、「ミニシンポジウムでは、2年前におこなった研究ではなく、現在おこなっている研究について話し合う機会が提供されます。」と、語っています。

  このような少人数参加型の集まりについて、数日間かけて他の研究者と親しくなれる絶好のチャンスと述べるのは、OIST生態・進化学ユニットのアレクサンダー・ミケェエヴ准教授です。ミケェエヴ准教授もまた、ミニシンポジウム「古生物DNAシンポジウム:考古学的サンプルのための新しいツール」を先月主催し終えたばかりです。

  ミニシンポジウムについて、「より奥深い議論ができ、他とは異なるダイナミックさがあります。」と同准教授は言います。

  電話会議やEメールにより世界のどこにいてもコミュニケーションが容易になったとはいえ、直接顔を合わせての研究交流は依然としてその重要性を失っていません。

  「理論物理学について議論する際に、方程式をEメールでやり取りするのは骨の折れる仕事です。」と語るのは、光・物質相互作用ユニットの代表をつとめるシーレ・ニコーマック准教授。同ユニットは日本学術振興会と共同で「光と物質の量子制御 ミニシンポジウム」を開催しました。ニコーマック准教授は、「アイディアを素早く共有できる場所」という言葉でミニシンポジウムを要約します。

  お互い既に面識のある参加者が集う場合もありますが、顔を合わせるのは初めてという研究者がほとんどです。

  古生物DNAシンポジウムには、デンマーク国立博物館及び米スタンフォード大学からモーテン・ラムズセン博士も参加しました。同博士は、「興味深い人たちが集まっていると思いました」と、感想を述べ、「著名な研究者もいれば、実際にどのような研究を手掛けているのか知らなかった人たちもいました。名前は頻繁に耳にするけれど、彼らの研究内容は知らないということがよくあります。」と、説明を付け加えました。

  これら一連のミニシンポジウム開催が呼び水となり、開学してまだ3年のOISTと本学で行われている幅広い分野の研究に対する認知度が高まっています。また、このような集まりは、沖縄から遠く離れた場所に位置する諸機関との連携強化や共同研究の実現にも寄与しています。

  「本土の大学からOISTに実際に足を運んでもらい、オープンな環境を見ていただく良い機会となりました。」と、ニコーマック准教授は言います。「今後の連携を後押しするはずです。」

  今年は少なくとも10回、ミニシンポジウムが開催される予定です。OISTミニシンポジウム一覧表はこちらからご覧いただけます。

  広報ディビジョンで副学長代理を務め、OISTで開催されるカンファレンスやワークショップに関する業務を取りまとめている森田洋平氏は、「今回の一連のミニシンポジウムを開催するに至った背後には、優秀な人たちが出会い、アイディアを交換する場を提供したいという目的がありました」と、説明した上で、「このプログラムがOISTや外部の研究者から支持されつつあることを嬉しく思います。今後もさらに多くのミニシンポジウムを開催していきたいです。」と、意気込みを語りました。

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