塩粒に刻まれたOISTロゴ

OIST研究支援スタッフがイオンビームを使ってOISTロゴを塩粒の上に刻み付けることに成功しました。

   沖縄科学技術大学院大学のロゴを思い浮かべてください。次に、ロゴが塩粒上に収まるようにロゴを縮小させることを想像してみてください。数週間前に生物研究支援セクションでは、地域連携セクションの依頼でOISTビジターセンターの展示用に、実際の塩粒、砂糖粒と米粒上へこのロゴのデザインを刻み付けました。そして集束イオンビーム加工観察装置/走査型電子顕微鏡(FIB/ SEM装置)を使用して、サンプルの顕微鏡画像を作成しました。

   通常OISTでは、FIB/ SEM装置は生物試料を観察するために多く使用しますが、同装置はほとんどすべての分野の試料の観察に使用することができます。まず、FIB/ SEM装置は試料に電子ビームをあてます。すると、様々な速度と方向に電子が跳ね返ります。検出器は、表面の跳ね返り電子を測定し、顕微鏡画像を作成します。次にガリウムイオンの集束ビームは、試料の表面をマイクロメーターの精度で薄く削り取ります。そして、再び電子ビームをあて、測定、画像作成というようにサンプル全体が完了するまでこの手順を繰り返して、いくつもの画像を作成します。通常、研究者はコンピュータを使用して画像を観察し、細胞が生物試料全体でどのように変化するかを削り面ごとに確認します。

   試料の物質量と削り取りの薄さが、削り取りと画像作成にかかる時間を決定します。たとえば、最近行なわれたスキャンでは、ピンヘッドの3分の1よりも少し小さい程度のサンプルを完了するために連続して約3週間の処理時間を要しました。この間に、FIB/SEM装置は、毎回20ナノメートルの薄さで試料を1000回にわたって削り取りました。その結果、10ギガバイトのデータと、1枚40平方マイクロメートルの画像1000枚を作成することに成功しました。

   生物研究支援セクションの佐々木敏雄さんは、単なる画像化だけでなく、FIB/ SEM装置を使用すればいくつかの特殊な画像を作成することができると確信しました。そして、ガリウムイオンビームを用いて米粒、塩粒と砂糖粒にOISTのロゴを刻み付けました。次に、ナノスケールのロゴの全体像を把握するための尺度を示す各々の写真を撮影しました。

 「塩粒が最も困難でした。なぜなら電荷をもたない試料の方が画像化に適しているからです」と、語る佐々木さん。ガリウムビームは正電荷を持ち、電子ビームは負電荷を持っているので、正か負のいずれかの電荷を持つ試料はどちらかに反発してしまいます。砂糖粒も塩粒も正負の電荷をもつ原子から成るため、伝導性があります。試料を非伝導性にするために、佐々木さんはそれぞれの試料を伝導性をもたない金でコーティングしました。しかしながら、塩粒は砂糖粒に比べて電荷が強いため、中性化するのに苦心しました。この理由から、ロゴは金でコーティングをした後でも、塩粒に刻まれたロゴは砂糖粒の上のものよりも少し乱れて見えました。

   得られた画像は、研究者にとっては細胞に関して何ら新しい情報をもたらすわけではありませんが、来訪者に対しては顕微鏡画像に関してより理解を深めていただくのに役立つことでしょう。画像はOISTビジターセンターに展示されています。

ラッシュ・ポンツィー

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